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はじめに
遺伝性ニューロパチーを起こす疾患は数多く存在するが,Charcot-Marie-Tooth病(CMT)は代表的疾患として扱われてきた。CMTは大きく分けて脱髄型と軸索型に分類されるが,遺伝子異常,臨床像,電気生理学的解析などがより進んでいるのは脱髄型である。PMP22遺伝子重複により引き起こされるCMT 1Aは脱髄型CMTの代表的存在で,欧米では脱髄型CMTの大多数を占め,本邦でも最も多いタイプと考えられている1)。脱髄性ニューロパチーは遺伝性と後天性に大別でき,後天性ニューロパチーにはGuillain-Barr症候群や慢性炎症性脱髄性ニューロパチー(CIDP)が代表的疾患として挙げられる。遺伝性脱髄性ニューロパチーと後天性脱髄性ニューロパチーは電気生理学的・病理学的に鑑別可能である。CMT1を代表とする遺伝性脱髄ニューロパチーでは,「脱髄の均一性」がキーワードとなる。つまり,単一神経でいえば,近位から遠位における区間のいずれでも同様の程度で伝導遅延があり,軸索間でもほぼ脱髄の程度は同様である。隣接する神経間では神経伝導速度には大きな差がない(例外は存在する。CMT Xとhereditary neuropathy with liability to pressure palsy(HNPP)では脱髄の程度が不均一である)。それに対し,後天性脱髄性ニューロパチーでは「脱髄の不均一性」が特徴的であるが,均一な症例も存在する。「脱髄の不均一性」の例として,遠位潜時やF波最短潜時が末梢神経中間部の伝導速度と著明な解離を示すことや,伝導ブロックがある。
さて,ここまで述べたように,脱髄性ニューロパチーの特徴は跳躍伝導の障害による神経伝導速度の低下であるが,神経伝導速度が遅いだけで臨床症状は説明できない。よく経験されることであろうが,CMT1型の無症候性キャリアーが,著明な神経伝導速度の低下を示しながら,筋力が保たれ,機能的には正常人と見まちがえるほどのphenotypeを示す例がある。つまり,脱髄は機能予後を必ずしも規定せず,軸索変性の程度が機能予後を規定する。CMT 1A型で二次性の軸索障害が起こる原因は,Schwann細胞と軸索のクロストーク(cross talk)の障害によると考えられる。つまり,髄鞘と軸索は単に隣接しているのみではなく,互いに栄養因子を放出し合っている。髄鞘機能低下により栄養因子の放出が減り,隣接する軸索は未成熟な段階に留まっていると考えられる。閾値追跡法は神経軸索のチャネル機能や安静時膜電位の評価が可能なことから,CMT1での軸索機能評価に適していると思われ,CMT 1A患者で評価を行った3)。
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