Japanese
English
総説
認知症と社会的側面―わが国における認知症ドライバー研究の動向
Social Aspects of Dementia:An Overview of the Japanese Researches About Driving in Patients with Dementia
上村 直人
1
,
池田 学
2
,
荒井 由美子
3
,
野村 美千江
4
,
博野 信次
5
Naoto Kamimura
1
1高知大学医学部神経精神病態医学教室
2愛媛大学大学院医学系研究科脳・神経病態制御医学講座脳とこころの医学
3国立長寿医療センター長寿政策科学研究部
4愛媛県立医療技術大学看護学科
5神戸学院大学人間心理学科
1Department of Neuropsychiatry, Kochi Medical School, Kochi University
キーワード:
dementia
,
driving
,
driving cessation
,
family care
,
social support system
Keyword:
dementia
,
driving
,
driving cessation
,
family care
,
social support system
pp.463-470
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100377
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はじめに
現代の日本社会において,自動車は便利な移動手段であるだけにとどまらず,生活の質を向上させる手段として欠かせないものになっている。近年,高齢の運転者数は急増しており,平成14年には,65歳以上の高齢者の運転免許保有者数が25歳以下を上回り,平成17年には900万人を超えるといわれている25)。一方,75歳以上の高齢運転者による交通事故はこの10年間で4.7倍に増加しており,特に死亡事故の発生率が高いことが社会的に問題となっている21, 30)。また,認知症(痴呆)患者の自動車運転免許保有者数は免許保有者数と認知症の有病率から,約30万人にのぼると考えられ,認知症患者による事故をいかに防止するか,各方面の対応が急がれている。そのような状況の中,2002年に道路交通法が改正され26),その103条で公安委員会は認知症患者の運転免許証を停止,あるいは取り消すことができるとされた。しかし認知症の中にも症状・程度がさまざまあり,どのような基準で「認知症患者」を判定し,どういった評価で運転中止を決定するかといった具体的な指針は法律にも示されていない8, 16, 21, 22)。
そこで本稿では,筆者らの所属していた「痴呆性高齢者の自動車運転と権利擁護に関する研究」研究班(班長:池田学)において行った研究成果をまとめた総合研究報告書18)の一部を紹介することとする。
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