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症 例 71歳,男性
複視と歩行時のふらつきを主訴に入院した。神経学的には,右の内直筋・上直筋・下直筋・上斜筋が麻痺していたが,外直筋・下斜筋は障害されておらず,対光反射は保たれ,眼瞼下垂もなかった。四肢の明らかな筋力低下はなかったが,左優位の運動失調があり,起立・歩行は困難であった。高血圧の既往があり,入院時の血液検査で糖尿病の合併が判明した。頭部MRIではT2強調画像で中脳腹内側の上小脳脚レベルに高信号域が認められたが(Fig. A),赤核レベルには明らかな異常はなかった(Fig. B)。MR angiographyでは脳底動脈の壁不整に加えて右内頸動脈の狭窄が認められた。抗血小板療法により治療し,眼球運動障害は右内転を除いて消失したが,運動失調は持続した。
コメント
Claude症候群は中脳の虚血性血管障害で起こることが多く,病変側の動眼神経麻痺と対側の運動失調を特徴とする脳幹症候群である1)。Claude症候群は下部赤核症候群の別称が示す通り,その責任病巣は赤核に存在すると長く考えられてきた2)。Seoら3)はClaude症候群を呈した6例の中脳梗塞症例についてMRIを用いて病変の局在を検討し,3例で病変は赤核よりも尾側に存在し,病巣が赤核レベルに達する3例でも赤核自体は障害されないか,最小限の障害にとどまり,むしろより腹内側に位置する上小脳脚が本症候群の責任病巣であると報告した。本症例でも画像上赤核は障害を免れており,より尾側の高さで腹内側に位置することが明らかである。本症例の画像はClaude症候群の成立に赤核の障害が必要条件でないことを示しており,Seoら3)の仮説を支持するものであると考えられた。
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