Japanese
English
特集 神経感染症の新しい展開
4.あたまにくるムシの話
Worms That Get on Our Nerves
丸山 治彦
1
,
名和 行文
2
Haruhiko Maruyama
1
,
Yukifumi Nawa
2
1名古屋市立大学大学院医学研究科宿主寄生体関係学
2宮崎大学(研究・企画担当)
1Department of Molecular Parasitology, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences
2Research & Planning, University of Miyazaki
キーワード:
protozoa
,
helminth
,
ectopic migration
,
eosinophilia
,
food-borne parasitosis
Keyword:
protozoa
,
helminth
,
ectopic migration
,
eosinophilia
,
food-borne parasitosis
pp.571-581
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100195
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はじめに
寄生虫は単細胞の原虫類と多細胞の蠕虫類とに大きく区分され,両者合わせておよそ100種類の寄生虫がヒトの疾病の原因となる。しかしながら中枢神経系に好んで寄生するものはそれほど多くない10)。自由生活アメーバやトキソプラズマ,広東住血線虫,アライグマ回虫などが代表的なものである。ただ,寄生虫が異所性に頭蓋内迷入したり,成虫が産出した虫卵が脳血管に塞栓を起こすことがある。
現在の日本では上下水道などが整備され寄生虫疾患は比較的稀であるが,日和見感染症のいくつかは寄生虫が原因であり,また海外で寄生虫に感染することはありふれている。しかも食品由来の寄生虫病は根強く存在するので,臨床医が中枢神経症状を伴う寄生虫症に遭遇する機会は常にあるといえる。その症状は,虫体やその分泌・排泄物による物理的,化学的な傷害と虫体に対する宿主の炎症反応による傷害の結果であり,それぞれの寄生虫感染に特有なものはない。そのため,常に脳腫瘍や寄生虫以外の原因による髄膜脳炎などとの鑑別診断が重要である。ここでは,中枢神経系寄生虫症の中でも国内で比較的遭遇する頻度が高いものについて適宜症例を交えつつ概説するので,鑑別診断の参考にしていただきたい。
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