Japanese
English
総説
痛みの脳内機構
Central Mechanisms of Pain Perception
乾 幸二
1
,
柿木 隆介
1
Koji Inui
1
,
Ryusuke Kakigi
1
1自然科学研究機構・生理学研究所・統合生理研究系感覚運動調節
1Department of Integrative Physiology, National Institute for Physiological Sciences
キーワード:
electroencephalography
,
magnetoencephalography
,
pain cognition
Keyword:
electroencephalography
,
magnetoencephalography
,
pain cognition
pp.5-15
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100115
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
痛み(pain)は実質的あるいは潜在的な組織障害に伴う不快な感覚的,情動的体験である。したがって,痛みは個人的な内的体験であり,覚醒レベルや注意,その時の活動状況などによって大きく影響される。一方,侵害受容(nociception)は侵害受容器の興奮から大脳に至る独自の伝導路(nociceptive system)の神経活動を指し,主観的な要素は含まない。このような定義に従えば,末梢での侵害受容のない痛み(例えば幻肢痛)や,痛みを伴わない侵害受容(スポーツ中の外傷)があり得る。本稿では侵害刺激により惹起される痛み(侵害受容性疼痛,nociceptive pain)を考察する。われわれは正常なヒトを対象としているため,nociceptive systemの活性化は痛みの認知を伴い,したがって侵害刺激により惹き起こされる脳活動には一次的な神経活動のほかに痛み認知に関連する神経活動も含まれることになる。両者の区別は困難であるので,結局侵害刺激に伴う脳活動全てを取り扱うことになる。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.