Japanese
English
総説
片頭痛の神経生理学―発作間欠期の皮質興奮性
Neurophysiological Evaluation of Interictal Cortical Excitability in Migraine
鈴木 一郎
1
Ichiro Suzuki
1
1日本赤十字社医療センター脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Japanese Red Cross Medical Center
キーワード:
migraine
,
aura
,
cortical spreading depression
,
cortical excitability
,
transcranial magnetic stimulation
Keyword:
migraine
,
aura
,
cortical spreading depression
,
cortical excitability
,
transcranial magnetic stimulation
pp.17-27
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100116
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はじめに
片頭痛はいったん開始すると4~72時間続く拍動性の疼痛で,左右差を認めることが多い。頭痛の程度が強く生活は大きく阻害され,有病率の高さと相まって経済的損失も大きい。悪心・嘔吐を伴うことも多く,光や音に過敏になることも特徴である。
この頭痛発作に先行して視覚症状,その他の感覚症状や運動症状,言語症状,めまい・耳鳴りなどの症状が出現することがある。これらの症状は前兆と呼ばれ,片頭痛患者の20%程度に認められる。その多くは一過性で60分以内に消失する。前兆が開始すると60分以内に頭痛が出現してくるが,前兆のみで頭痛を伴わない片頭痛もある。また,前兆を伴う患者も毎回前兆を伴うとは限らない。
片頭痛は前兆の有無によって,前兆を伴わない片頭痛(migraine without aura,以下MO)と前兆を伴う片頭痛(migraine with aura,以下MA)とに分類される。前兆では視覚性のものが多いが,中でも閃輝暗点(scintillating scotoma)が最も多い。閃輝暗点は視野の一部が突然ぼやけてきて暗点となり,その辺縁がジグザグ状の閃輝となり,5~30分かけて徐々に拡大し最後に同名半盲を呈するもので,その病態には後述する拡散性抑制が関与していると考えられている。
片頭痛は発作性疾患ではあるが,発作間欠期から視覚機能をはじめ大脳皮質興奮性の異常を示唆する神経機能障害が指摘されている。このため,発作間欠期の皮質興奮性の研究は片頭痛病態解明に寄与するものと考えられる。本稿では,発作間欠期の大脳皮質機能を中心にこれまでの知見を概説する。
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