Japanese
English
特集 香りと脳
4.嗅覚障害の診断と治療
Recent Clinical Trends in Smell Disorder
石丸 正
1
Tadashi Ishimaru
1
1公立南砺中央病院耳鼻咽喉科
1Department of Otorhinolaryngology, Nanto General Hospital
キーワード:
olfaction
,
smell
,
T & T
,
CC-SIT
,
Sniffin' Sticks
Keyword:
olfaction
,
smell
,
T & T
,
CC-SIT
,
Sniffin' Sticks
pp.659-666
発行日 2005年8月1日
Published Date 2005/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100063
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はじめに
視覚や聴覚と異なり,嗅覚の異常への医療の対応はまだまだ不十分である。以前は,嗅覚の基礎研究自体が未発達である点を,臨床が発展しない理由とすることもできたが,嗅覚受容体の発見5)に対し2004年のノーベル医学・生理学賞が授与されたように,近年は嗅覚に関する基礎医学的知見が急速に増加している。それゆえ,臨床医も現時点における嗅覚の臨床に関する知識を整理し,患者への対応が旧態依然とならぬように迫られると思われる。
嗅覚は,ヒトよりは動物が発達しており,生物の種の違いを超えて存在している感覚でもあるが,ヒトのニオイの認知においては,帰属する文化の影響が大きい。このため,ある民族において好ましいニオイが,別の民族では悪臭になることもある。また,ニオイの質に対する認知の確認も文学的表現に頼らざるを得ないこともあり,聴覚や視覚に比べて評価があいまいになりがちである。聴力検査や視力検査のような国際的な統一基準が嗅覚において未だ存在しないのは,正にこの点にある。
治療面でもEBMの確立したものはほとんどない有様であるが,今日なお研究が発展途上にあり,嗅覚障害の病態が十分解明されていないがゆえの面もあると思われる。そこで,嗅覚障害を診断と治療の両面から検討し解説する。
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