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近年,精神医学が歴史離れしすぎたことへの反動か,精神医学史の重要性が見直され,また一方では20世紀の100年間の精神医学をどう総括するかという問題意識が高まりつつあるように思われる。そうした折,精神医学史の国際シンポジウムが,名古屋市立大学で濱中淑彦会長のもとで開催されたことは時宜にかなう試みであった。1999年3月20日,21日の両日,ポスター発表の7題を含む40題の研究発表がなされた。「History of Psychiatry on the Threshold to the 21st Century-Two Millennia of Psychiatry in the West and East」と銘打っていることから想像されるように,過去2000年の流れの縦糸に比較文化の横糸を編み,さらに来るべき21世紀を展望するというところに主要な狙いがあった。
GalenやParacelsusといった古典から,PinelやESquirolによる近代精神医学の誕生を経て,Kraepelinから現代までという非常に長いタイムスパンから研究対象が取り上げられた。精神医学史の本流である症状学,疾病学と並んで,精神療法,行動療法,精神外科,心身医学など,治療観の変遷に焦点を絞った発表,あるいは優生学や第二次大戦後の脱病院化の背景という社会文化的側面からの発表など,関心の方向も多彩であった。精神医学からの多数のシンポジストに加えて,歴史学,社会学からの参加者もあり,その意味で学際的な交流の場でもあった。海外からの発表は16題(ポスター4題を含む)で,ヨーロッパ・アメリカ以外からは,韓国からの2題,中国からの1題があった。
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