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■はじめに
医療法第4条では「総合病院とは病院であって,患者100人以上の収容施設を有し,その診療科名中に内科,外科,産婦人科,眼科及び耳鼻いんこう科を含み,……」と定義されているが,その診療科の中に精神科は含まれていない。また,厚生省の臨床研修病院の指定基準では独立した精神科を設置することがうたわれているが,暫定措置として精神科医がいなくても研修病院として認められている病院もある。このように,我が国においては総合病院における精神科の必要性はあまり重要視されていないのが現状である。
道下21)は1984年6月の時点で我が国の精神科病床数は一般病院を含めて,323,900床あるが,この大部分は単科の精神病院が提供しており,一般病院精神科の病床は9%にすぎないと報告している。この割合は現在もそれほど変わっているとは思えない。また,黒木ら15)の調査によると全国の総合病院(1,073施設)で精神科病床を有する施設は22.6%(242施設),精神科外来のみの施設は23.9%(256施設)にしかすぎず.精神科が設習されていない総合病院は全体の53.6%(575施設)に上るという。このように我が国の総合病院における精神医療は貧しく,実際,我が国の総合病院精神医学の立ち遅れを指摘する声は多い1,14)。そのため総合病院の中に精神科の設置を望む声20)や,総合病院に精神科を必置とするように医療法を改正せよとの運動7,16)だけでなく,各病院に精神科を設置せよとの意見7)まである。
なぜ,このように我が国の総合病院精神医学は立ち遅れているのかをその歴史を振り返ることにより明らかにし,現状と問題点を分析するとともに最近の我が国における総合病院精神医学の流れを検討してみる。また,北里大学における新しい精神医療の実践を紹介し,総合病院における精神医療の1つのあり方を提示してみたい。
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