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日本における精神医療は,従来の入院を中心とする医療から,障害者を地域で支えながら社会参加をめざす地域精神医療の充実を志向する方向へと変化してきている。地域精神医療を充実させるためには,精神状態が不安定な際に必要に応じて適切な危機介入を行うことが不可欠であり,効果的な精神科救急医療体制の整備が望まれている。しかし竹内ら10)の報告によると,現在のところ精神科救急医療体制が当該の都道府県全体を対象としたシステムとして整備されているのは,東京都など少数の地域に限られている。島根県でも,全県下を対象とした精神科救急医療体制は確立されておらず,個々の精神科医療施設が独自に対応しているのが現状である。厚生省は平成10年度中にすべての都道府県において精神科救急医療体制を整備する方針を打ち出しており,本県でも具体的なシステム作りが検討されている。しかし,このシステムが有効に機能するためには,多くの課題が残されている。例えば,精神科救急医療に求められるものは,活発な病的体験や問題行動への対処から,合併する身体疾患の治療まで,かなり幅が広く,そのすべてに単独の精神科医療施設が対応することは困難である。しかし,システムを構築するために必要な精神科医療施設間の機能分担についての論議もまだ十分には行われておらず,また,その基礎となるべき実態調査も行われていないのが現状である。西山8)が報告しているように,行われている精神科救急医療は地域によって大きく異なっており,措置入院が大半を占めるものから,通常の外来診療の延長といったものまで多岐にわたっている。したがって,精神科救急医療体制を構築するためにはその地域における救急医療の実態を十分に把握,理解しておくことが不可欠といえる。
筆者らは島根県下において望ましい精神科救急医療体制を構築する資料とするために,本県の精神科救急医療の現状についての実態調査を行った。本稿では,現在行われている島根県における精神科救急医療の地域格差について検討した。一部,精神科医療施設の機能分担についても言及して,その概略を報告する。
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