Japanese
English
研究と報告
多重人格を呈した解離型ヒステリーの1例
A Case of Dissociative Disorder as Multiple Personality
中島 一憲
1
,
溝口 るり子
1
Kazunori NAKAJIMA
1
,
Ruriko MIZOGUCHI
1
1東京都教職員互助会三楽病院精神神経科
1Department of Neuropsychiatry, Sanraku Hospital, the Mutual Aid Association for Tokyo Metropolitan Teachers and Officials
キーワード:
Multiple personality
,
Dissociative disorder
,
Amnesia
,
Regression
,
Trauma
Keyword:
Multiple personality
,
Dissociative disorder
,
Amnesia
,
Regression
,
Trauma
pp.429-435
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903437
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【抄録】 我が国では稀な病態である多重人格を主とする多彩な症状を呈した解離型ヒステリーの1例を報告した。症例は19歳の女性。発現した症状は,人格交代,健忘および遁走,幻聴などであり,人格交代では,本来の第一人格とは対照的な特徴を持っ第二人格と,13歳以前の第一人格への自動的な年齢退行を示した人格の二つの交代人格がみられた。第二人格への交代には,就職や失恋体験との時間的関連が強く認められた。入院治療が症状消退に対しては有効であった。
本症例では,特有な性格特徴を基盤として,現実生活における葛藤状況からの逃避や願望充足という意義を持つ心理的防衛機制が働き,症状発現に至ったものと考えられた。また13歳時の「母親の急死」という心的外傷体験が病理性をはらみ,症状発現に関与していたと推定された。さらに人格交代に対する治療的かかわり方や心理検査についても考察を加えた。
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