Japanese
English
研究と報告
特異的な「人格変換」を見せた分裂病症例についての1考察
A Consideration about Schizophrenic Cases with Specific Personality Conversion
藤井 洋一郎
1
,
山本 滋隆
2
Youichiro FUJII
1
,
Yoshitaka YAMAMOTO
2
1北林病院
2名古屋大学医学部精神医学教室
1Kitabayashi Hospital
2Department of Psychiatry, Nagoya University School of Medicine
キーワード:
Schizophrenia
,
Personality conversion
,
Pseud possession
,
Multiple personality disorder
Keyword:
Schizophrenia
,
Personality conversion
,
Pseud possession
,
Multiple personality disorder
pp.1041-1047
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903744
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【抄録】 今回,我々は精神分裂病にみられた多重人格様状態を2症例経験した。その症例の中で,病者は自分自身を“彼”と呼び,病者の中の人格である“我々”が“彼”を連れてきたり,病者の中の人格が病者自身に代わって退院を要求したりした。まず,診断を確認した後,症状論的に検討を加えたが,この症状は従来からいわれてきた独語症状やSéglasのいう精神運動性幻覚にも一致せず,安永のいう擬憑依に一致すると考えられた。それゆえ,この特異的な人格交代現象を擬憑依型人格交代と呼んだ。この擬憑依は幻覚作為体験優位型の病型において生じやすいと考えられる。そして,精神病過程によって解離類似状態が生じ,そこに種々の力動が関与することにより問題とされた多重人格様症状が出現したと考えられた。また,その他の特徴とともに,多重人格障害の診断基準(DSM-Ⅲ-R)は従来よりさらに厳密になされなければならないことを示した。
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