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■はじめに
本シンポジウムにおける報告者の役割は,看護職の立場からスーパービジョンとコンサルテーションについて述べることである。もっとも報告者は,臨床家としての最初のトレーニングを,精神衛生学専攻の大学院生として,精神科医と臨床心理学者から受けている。実地訓練とフィールドワークを兼ねて足を踏み入れた単科精神病院では,元来の専攻であった社会学の視点ゆえか,病院組織に貫かれた官僚主義と看護職員に浸透した無力感が目につき,看護職員の意識と病院組織に通底する問題点についての参与観察的な分析を論文にまとめた4)。しかし,すでに臨床的な視点が身につきつつあった報告者には,社会学者に徹して高見の見物に終始することができなかった。そして,地域精神医療に向かおうとする流れを横目でにらみながら,精神医療の質を左右すると思えた看護集団の一員として,本腰を入れた臨床活動を病院で始める道を選んだ。
報告者が精神病院研究と並行して関心を抱いていたテーマがスーパービジョンであった。報告者の属した精神衛生学講座には,総合病院の精神科に入院している思春期の患者を家庭教師兼カウンセラーとして受け持ち,患者の主治医や教員などからスーパービジョンを受けるという形のトレーニング・システムがあった。16歳になる摂食障害の患者を受け持ち,最初のケースとのかかわりにはつきものの巻き込まれ体験と共に,スーパーバイザーとの葛藤も体験した報告者は,自分の受けたスーパービジョン体験の分析を糸口にして,臨床家としての初期体験に焦点を当てたスーパービジョン論を展開してみたいと考えた。しかし,教員に相談を持ちかけたところ,そのテーマを取り上げるのはまだ早すぎるからやめたほうがいいと即座に言い渡されてしまった。
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