動き
「第16回日本神経心理学会総会」印象記
田辺 敬貴
1
1大阪大学医学部精神神経科
pp.1368-1369
発行日 1992年12月15日
Published Date 1992/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903370
- 有料閲覧
- 文献概要
ちょうど筆者が大学を卒業した1977年,東京大学の豊倉康夫教授と京都大学の故大橋博司教授を中心に数十名の有志が集まり懇話会として発足したと聞く本会は,年々発展し現在会員数1,500余名の学会となっている。第16回の本学会は,1992年9月17,18日の両日,千葉大学平山惠造教授会長のもと,千葉の幕張にある海外職業訓練協力センターOverseas Vocational Training Association(OVTA)にて開催された。今回は平山会長の発案で,約400名が宿泊可能な当施設でイブニングセミナーという新しい試みがなされた。
数年前より100題を超すようになった一般演題数は今年は130題を数え,650余名の多数が参加し,本会では恒例となったカセットやVTRによる生のデータを混じえ,A,B 2会場に分かれ,活発な討論がなされた。一般演題では,とりわけ記憶障害の演題数増加が目立ったが,加えてここ数年来の傾向である変性疾患による巣症状への関心も目を引いた。前者に関しては,TulvingやSquireらの記憶理論による新しい展開ないしは見直し,一方後者に関しては,近年の形態的のみならず機能的画像診断法の進歩により,Alzheimer病をはじめとする脳変性疾患においても生前に臨床解剖学的対応が可能になったことが,大きな要因として挙げられる。脳科学が飛躍的進歩を遂げた現在,先人の主張あるいは意見を今の我々の目であらためて見直すことも,我々に課せられた義務,本当の意味での温故知新ではなかろうか。
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.