動き
第84回日本精神神経学会総会印象記
山口 成良
1
1金沢大学医学部神経精神医学教室
pp.939
発行日 1988年8月15日
Published Date 1988/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204574
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第84回日本精神神経学会総会は,本年5月11日から3日間,斉藤正己会長(関西医大教授),工藤義雄副会長主催のもとに大阪国際交流センターにおいて開催された。総会開催に先立つ10日に理事会,評議員会が行われ,新理事・監事が選出された。また,総会への理事会・評議員会からの提案議案としての「精神保健法に関する見解案」が審議された。
学会第1日目午前中のシンポジウムⅠ「青年期の精神医学」(司会:大原健士郎・山崎晃資)では,清水將之氏,生田憲正氏,渡辺直樹氏,松本英夫氏によって,青年期精神医学の今日的課題としての境界例やうつ状態,摂食障害とパーソナリティー病理,不登校などの教育問題青年期前期に発症した精神分裂病などがとりあげられた。午後のシンポジウムⅡ「神経伝達物質:精神疾患および向精神薬との関連」(司会:山下格・融道男)では,融道男氏,野村総一郎氏,中澤欽哉氏,今津好秀氏,小山司氏,新井平伊氏,山脇成人氏より,精神分裂病脳のベンゾジアゼピン受容体から,抗うつ薬の脳内薬物動態や生体アミン受容体の変化,覚醒剤精神病・アルツハイマー型痴呆などにおける神経伝達物質の変化悪性症候群の発症機序など,臨床に直結した基礎的問題が討議され,学会に新風を吹き込んだ感が強かった。また,特別シンポジウムとして,「精神医療向上のための医療費体系を考える」(司会:工藤義雄・道下忠蔵)が行われ,最初に京大経済学部の西村周三教授の「精神科医療費の経済学的考察」という講演があり,老人の医療費,特に老人保健施設の医療費を精神科も参考にされるようにと力説された。
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