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特集 精神科領域におけるインフォームド・コンセント
インフォームド・コンセントの歴史—その法理と医学的側面
History of “Informed Consent”: it's legal and medical aspects
加藤 伸勝
1
Nobukatsu Kato
1
1京都府立医科大学
1Kyoto Prefectural University of Medicine
キーワード:
Paternalism
,
Nuremberg code
,
Rights of patients
,
Information and consent
Keyword:
Paternalism
,
Nuremberg code
,
Rights of patients
,
Information and consent
pp.1277-1283
発行日 1992年12月15日
Published Date 1992/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903355
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昔から“「医」は「威」であり,「衣」である(長尾藻城:噫医弊)”といわれたという。「衣」はつつむ,かばうの意と権威の衣の意にも通じる。ヨーロッパの医の倫理の歴史は,紀元前5世紀の「ヒポクラテスの誓い」に遡り,彼の名と共に繰り返し語られてきた。
「ヒポクラテスの誓い」19)には良医の条件,医道のあり方が説かれており,「能力と判断の限り患者に利益するとおもう養生法をとり,悪くて有害と知る方法を決してとらない。頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせることもしない,同様に婦人を流産に導く道具を与えない。―いかなる患家を訪れるときも,それはただ病者を利益するためであり―女と男,自由人と奴隷のちがいを考慮しない。他人の生活について秘密を守る,その誓いを守り続ける限り,いつも医術の実施を楽しみつつ生きてすべての人から尊敬されるであろう……」と述べられている。今日まで語り継がれている赤髭医師の心境は正にこの誓いのとおりであり,これこそは善意のパターナリズムの真髄ともいえる。それゆえ,医師は神のごとく,かつまたカリスマ的存在者であることが長く求められてきたのである。
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