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■はじめに
1990年1月に日本医師会生命倫理懇談会は,「説明と同意」についての報告を公表している。そこに用いられているアンケートは,精神科医療を主たる対象としていない。精神科医療については,一般と異なる条件を持っていることでもあり,厚生科学研究の一分野として「精神科領域における告知同意のあり方に関する研究」を受け持つ班として,新たに精神科医療に関する説明と同意についてのアンケートを,精神科医のみを対象として,1990年12月に実施した。
1988年7月精神保健法が施行され,入院形態として任意入院を取り入れて告知同意の重要性が強調された。しかし,入院時の処遇や行動制限の様態の告知,入院生活にかかわる患者の諸権利の告知とその同意が主で,必ずしも,病名,治療内容,効果副作用,予後等についての説明を義務づけるまでには至っていないで,各自の裁量に任せられているのが実情である。
今回のアンケートでは,「説明(告知)と同意」と銘打って,いわゆるインフォームド・コンセントに近い問いかけを行い,説明という言葉の中の内容を,一応回答者の受け止め方に任せることとした。もちろん,23の質問の中には,精神分裂病の病名告知のこと,インフォームド・コンセントという言葉を用いてのものも含まれている。結局は,精神科医療領域にかかわるインフォームド・コンセントを,実務に携わっている精神科医が,現状では,どう考え,どう対応しようとしているかという傾向を考える上での資料とする意図で行われた。
回答を要請した対象者は,国公立病院,公的病院,大学病院,民間病院,その他センター研究所などから適宜選び,656通送付したのに対し,364(55%)の回答を得た(表)。以下各項目で,数字から読みとれることを研究班の討議の資料とした。特に各質問項目に,自由なコメントを付することを要望したことで,各回答者の自由な見解なり感想なりが述べられて,極めて興味深く参考となった。これらを踏まえて以下7項目に分けて概観することにする。
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