Japanese
English
特集 不安の病理
不安とストレスの生理学
Physiology of Anxiety and Stress
山下 格
1
Itaru Yamashita
1
1北海道大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry, Hokkaido University School of Medicine
pp.1313-1317
発行日 1991年12月15日
Published Date 1991/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903162
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■はじめに
不安は心身一如の現象である。我々はそれを日常の体験から知っている。
激しい不安を感ずると同時に,胸がたかなり,息がつまり,冷汗がにじむ。不安を感ずるのが先か,胸の鼓動を感ずるのが先かは,問うのが無理であって,両者は同じ現象の両側面である。それは持続的な不安状態においても同様である。
この関係を端的に示す1例は,DSM-Ⅲ-Rの診断基準4)であろう。例えば全般性不安障害のD項の18項目の症状は,以下のようである。運動性緊張:(1)身震い,攣縮,動揺する感じ,(2)筋肉の緊張,痛み,うずき,(3)落ち着きのなさ,(4)易疲労性。自律神経機能亢進:(5)呼吸困難,または息苦しい感じ,(6)心悸亢進,または脈拍の促迫(頻脈),(7)発汗,または冷たく湿った手,(8)口渇,(9)めまい,または頭のふらつく感じ,(10)嘔気,下痢,またはその他の腹部の苦痛,(11)紅潮(突発性の熱感),または冷感,(12)頻尿,(13)嚥下困難,または“咽喉の異物感”。警戒心:(14)緊張感や過敏,(15)過度の驚愕反応,(16)集中困難,または不安のために“心が空白となる”こと,(17)入眠困難や途中覚醒,(18)易刺激性。
これらの身体的変化(ないし感覚)および警戒心は,A項の「非現実的で過度の心配(予期憂慮)が2つ以上の生活環境に関するもの」4)とともに,不安を診断する標識となっている。ほかにも意識されない身体的変化が,広範囲に生じていることは言うまでもない。
本章の目的は,不安に伴うこれらの身体的変化を吟味し直し,その様相と由来を概観することである。
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