Japanese
English
研究と報告
拘禁状況において自己臭恐怖を生じた3症例
Three Cases of Prison Psychosis with Fear of Emitting Body Odor
油井 邦雄
1
Kunio Yui
1
1法務省栃木刑務所医務課
1Ministry of Justice, Tochigi Prison, Department of Medical Service
キーワード:
Prison psychosis
,
Fear of emitting body odor
,
Human relation
,
Defense mechanism
Keyword:
Prison psychosis
,
Fear of emitting body odor
,
Human relation
,
Defense mechanism
pp.841-847
発行日 1991年8月15日
Published Date 1991/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903095
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【抄録】 権威を代表する職員と被収容者間の公的関係,および被収容者同士の連帯的関係という,拘禁に特有な閉塞的人間関係の中での浮き上がりと共同体感情の喪失から,自己臭恐怖を呈した3症例を報告した。症例1は作業能力の低劣,および吃音による劣等感や被害感,症例2は排他的で攻撃的な性格と主我主義的心性,症例3は自己卑下と被害感の反転としての攻撃性のゆえに集団生活に参入しえなくなり,共同体感情の喪失,ないし疎外感を紛らす自己弁明的防衛として,体臭に親和的な状況を契機に発病したことを考察した。
従来の自己臭恐怖の体験構造に加えて,“虫が好かない”特定の他者を対象に疎外感の自己弁明的色彩が濃厚であった。3症例は過敏で心気的に自己を観察する傾向にあった個人における人格反応として,拘禁反応の反応性妄想ととらえうるが,拘禁反応に特有の赦免願望やそれに由来する目的性,反応性が認められない点で真の精神疾患に近似していた。
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