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特集 心因をめぐる諸問題
第3回日本精神病理・精神療法学会シンポジウム
拘禁反応の心因性
The Psychogenesis of Prison Psychosis
小木 貞孝
1
Sadataka Kogi
1
1東京医科歯科大学犯罪心理学教室
1Dept. of Criminal Psychology and Forensic Psychiatry, Institute of Forensic Sciences, Tokyo Medical and Dental Univ.
pp.395-402
発行日 1967年6月15日
Published Date 1967/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201204
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心因という言葉は,体因(内因や器質因)とともに,ある精神異常状態の病因を想定している言葉であろう。この場合,ある準備要因すなわち体質・素質,心的発達などをもつた人間が,心的体験,すなわち環境からの作用をうけそれに反応するという力動的な見かた(たとえばE. Braun1)やE. Kretschmer2)のヒステリー論)が臨床的にはひろくうけいれられている。したがつて,心因とは心的体験を指し,心因反応は,一般に刺激と反応の図式で云々され,心因反応の特徴として,その成立が機能的であることやその経過が可逆的であることが暗々裡に認められているふしがある。
たしかに,この刺激と反応の図式,すなわち「準備要因+心的体験=心因反応」という公式は,研究および臨床の実際上便利でもあるし,事実,私たちが拘禁状況における精神異常に注目し研究をはじめたときも,この図式が念頭にあつたわけである。けれども,私たちが研究をすすめていくうちに,この図式だけでは解決できない現象に出あうようになり,拘禁反応の心因性という問題を根本から考えなおさねばならない仕儀になつた。そこで,以下,私たちの経験を述べながら,心因性という問題を考えていきたい。
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