Japanese
English
短報
自己臭恐怖の症状形成—非妄想性の1例から
A Case of Nondelutional Eigengeruchsphobie (Fear of Body Odor Oozing Out of Oneself) and its Symptom Formation
井上 洋一
1
,
水田 一郎
1
,
佐藤 寛
2
,
小笠原 将之
3
Yoichi INOUE
1
,
Ichiro MIZUTA
1
,
Hiroshi SATO
2
,
Masayuki OGASAWARA
3
1大阪大学医学部精神医学教室
2星が丘厚生年金病院神経科
3国立大阪病院神経科
1Department of Psychiatry, Osaka University Medical School
2Department of Neuropsychiatry, Hoshigaoka Koseinenkin Hospital
3Department of Neuropsychiatry, Osaka National Hospital
キーワード:
Abdominal distress
,
Social phobia
Keyword:
Abdominal distress
,
Social phobia
pp.637-639
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904566
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
自分の身体から臭いが出て周囲の他人から忌避されるという特異な訴えを持つ自己臭恐怖は青年期に好発する疾患である。従来は症状の特徴から重症の対人恐怖,森田神経質の特殊型,あるいは関係妄想の存在により分裂病との関連が問題にされてきた。しかしこのいずれにも該当しない中間的性質を持っているために,植本ら1)は思春期妄想症としてまとめている。笠原ら2)は自己臭体験が神経症から分裂病,まれにはうつ病にまで現れうることを指摘し,最も多いのは境界例あるいは重症神経症であるとしている。今回我々は自己臭恐怖と全く同じ構造の症状を訴え,妄想的確信のみを欠く症例を経験した。この症例は発症に至るまでの心的過程を自覚し語ることができた。一般に自己臭恐怖患者は身体の異常に妄想的確信を持ち発症への心理的要素の関与を否定しているために,発症に至るまでの心理については詳しく語られることがない。本症例は自己臭恐怖症の発生の心的メカニズムについて貴重な示唆を与える症例であると考え報告する。
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.