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本年6月1日に第31回日本心身医学会のトピックス1)として,“Psychoneuroimmunology”(PNI)というテーマで,久留米大学免疫学教室の横山三男教授のお話2)を拝聴した。以前から癌の自然退縮と特殊な精神状態とリンパ球の抗癌免疫抗体の相関性を研究されている中川俊二先生のご研究に興味を持っていたが,PNIという的確な名称をもった新しい学名に公式に接したのは,この横山教授のお話が初めてで,我が意を得たりと,大感激した。この内容を少し紹介してみると,情動刺激で分泌される神経伝達物質,神経ペプタイド,ホルモンなどが,免疫細胞に影響を与えることが明らかにされてきた。そして神経—内分泌系から放出される物質によって,免疫細胞は活性化され,活性化した免疫細胞はサイトカインなどを放出して,脳,中枢神経系,内分泌系などヘフィードバックされ,免疫系と神経系と内分泌系の三者は二方向性の生体調節機構を形成している。したがって,精神的なストレスは免疫系の働きを時には低下せしめる。そしてこの反対に,免疫系の働きを修復し,向上させる方法もある。と動物実験の結果を示された。すなわち,マウスで,騒音,拘束,高圧,手術などでは免疫応答が抑制される。このときは,胸線が萎縮していた。これに対して,胸腺が萎縮されないようなストレスの時には免疫応答の増強効果がみられた。たとえば,適度な疼痛負荷の場合であり,また特定の香料による嗅覚中枢の刺激によって免疫能の修復または上昇をみている。したがって,aromatherapyの開発も期待されるとのお話であった。
次にこのトピックスなどを企画された中川哲也会長の九大心療内科の手嶋秀毅講師から,心身医学会理事長池見酉次郎先生監修の「内なる治癒力,こころと免疫をめぐる新しい医学」3)を載き,一読して感嘆させられた。
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