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特集 精神疾患の脳画像解析と臨床応用の将来
気分障害の脳画像解析と臨床応用
Brain Imaging Studies in Mood Disorders and its Clinical Applications
井田 逸朗
1
Itsuro IDA
1
1群馬大学医学部神経精神医学講座
1Department of Neuropsychiatry, Gunma University, School of Medicine
キーワード:
Mood disorders
,
Brain imaging
,
Neuroendocrinological function
Keyword:
Mood disorders
,
Brain imaging
,
Neuroendocrinological function
pp.1199-1206
発行日 2002年11月15日
Published Date 2002/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902738
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はじめに
機能的脳画像診断法が気分障害の病態研究に応用されて以来,すでに多くの研究成果が蓄積している。うつ病相にある気分障害患者の局所脳血流や局所脳糖代謝を健常者と比較することによって,前頭前野背外側部での機能低下と,精神運動抑制や認知機能障害といった抑うつ症状の重症度と相関していることが明らかになった。その他には基底核,頭頂葉や側頭葉皮質の部分的な機能低下が報告されている。一方,前頭前野腹側部では,脳梁膝下部での代謝低下を除いては,活動亢進が報告されている。このようにうつ状態にある気分障害患者において,健常者に比べ機能が低下あるいは亢進している脳部位を同定することが可能となっている。さらに抗うつ薬・電気けいれん療法・断眠療法などの治療を施した後での再検査に行えば,治療反応者を調べることによって,治療反応性と関連した脳部位の検索が可能となる。また,治療抵抗例や,再発を繰り返す症例を対象に検査を繰り返していくことで,再発予測性と関連する可能性のある局所脳部位の候補が明らかとなりつつある。
一方,最近のライフイベント研究から,気分障害の発症脆弱性の形成に,幼児虐待をはじめとする幼少期の不適切な養育環境が大きく影響しており,こうした既往を持つ小児・思春期症例を調べた結果,社会認知機能の発達と関係の深い上側頭皮質に形態的変化を来していることがわかってきている。
本稿では最近の気分障害を対象とした画像研究の進展状況とその臨床応用性について述べた。
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