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はじめに
現在,日本における65歳以上の老年人口が全人口に占める比率は約16%であるが,2050年には30%を超えると見込まれている。その中でも「痴呆性老人」は厚生省の発表によれば,2000年には約160万人となっており,2050年には400万人を超える可能性が示唆されている。このような状況において,増加する老年期痴呆への対応は急務と言わざるをえない。
実際の臨床の場における痴呆性疾患の診断は,かつて神経心理学的側面から行われ,その確定診断は剖検脳においてなされてきた。脳の形態学的情報を提供するX-ray computed tomography(CT)や核磁気共鳴装置(Magnetic Resonance Imaging;MRI)は,脳の器質的病変を除外診断する目的で使用されてきた。しかし近年では脳の機能・代謝情報を提供するポジトロン断層装置(Positron Emission Tomography;PET)やシングルフォトン断層装置(Single-photon Emission Tomography;SPECT)といった脳画像診断装置の普及による客観的診断法の確立や,MRIによる局所脳皮質の萎縮の検出によって,より客観性の高い生前診断が可能となってきている。また3D-SSP(Three-dimensional Stereotactic Surface Projections;3次元定位脳表投射法)やSPM(Statistical Parametric Mapping)などの脳マッピングの技術に基づく脳画像解析法の進歩は,老年期痴呆性疾患の病態生理解明の手段の1つとしての礎を担ってきた。そこで得られた多くの情報は,画像診断法としての新しい手段を提供するばかりでなく,アルツハイマー病の薬剤治療戦略上で重要な情報を提供できるまでに発展している。
本稿ではアルツハイマー病およびその類縁疾患でのSPECT,PETを用いた脳機能画像検査法で得られた知見を紹介するとともに,治療を含めた臨床応用の現状と将来への展望について言及する。
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