特集 精神疾患の発病規定因子
感情障害の発病規定因子—最新の知見とポイント
樋口 輝彦
1
1国立精神・神経センター国府台病院
pp.472
発行日 2000年5月15日
Published Date 2000/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902217
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感情障害の発病に関しては脆弱性とストレスがキーワードである。脆弱性を規定する要因には遺伝,病前性格,神経情報伝達系の機能異常,ホルモン調節系の機能障害などが想定される。一方,ストレスは心理的ストレスと身体的ストレスに分けられる。
本特集では,このうち最近めざましい進歩のみられる行動遺伝学研究,ストレス脆弱性の研究,画像診断とうつ病の病態を取り上げる。病前性格の検討はKretschmerの循環気質に始まり,下田の執着性格,Tellenbachのメランコリー親和型へと結実していったのは周知のことであるが,これに加えて躁病の病前性格であるマニー親和型の研究も進展し,病前性格研究は幅を広げていった。しかし,病前性格研究はあくまでも精神病理学研究の土俵の上で行われるにとどまり,生物学的研究の視点は方法論上の問題もあって,手つかずの状況にあった。しかし,最近のDNA研究の進展は相関研究という形で病前性格研究に新たな視点を持ち込んできている。本特集において,神庭は躁うつ病の発病規定因子を総説しているが,その中心課題は心理学的概念である性格を遺伝子という生物学的概念で裏打ちする試みである。
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