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最近の精神科診療は,発達障害概念を一つの軸に置いて診断や治療にあたらなければ成り立たないと言っても過言ではない。一般精神科診療においても,他の精神疾患に併存する形で発達障害が潜在していることが少なくなく,その知識や適切な対応が否応なく求められる時代となっている。そんな時に『精神医学』2023年増大号で組まれた特集「いま,知っておきたい発達障害Q & A 98」はまさに時宜にかなった大変有意義で実践的な内容の企画である。
本特集は,98項目のクリニカル・クエスチョン(CQ)から成っているが,実際に,臨床の現場から質問を募集しただけあって,日常臨床でしばしば遭遇する問題が概念(7項目),疫学(2項目),病態(8項目),診断(24項目),鑑別と併存(19項目),治療(38項目)に分類されて並べられている。いくつか実際のCQを例に挙げると,「大人になって発達障害が発症することはありますか?」「発達障害はなぜ増えているのですか?」「発達障害を疑った時,どんな心理検査を実施するのがよいでしょうか?」「日常臨床の発達障害の診断に使いやすいツールを教えてください」「クリニックでの発達障害を疑われる患者さんへの対応のコツを教えてください」「患者さんに発達障害についてどう伝えるとよいでしょうか?」「発達障害の特性はあるものの診断閾値下(いわゆるグレーゾーン)である場合,今後,どのような対応が考えられますか?」「単身で受診した大人で情報がない場合に発達障害と診断するポイントを教えてください」「発達障害に併存症がある場合の治療の考え方を教えてください」「発達障害の感覚過敏について,どのような対応がありますか?」「比較的短い時間で発達障害の患者さんに対応する工夫はありますか?」などであり,一般精神科医にとって非常に参考になる項目が満載となっている。
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