書評
—金生由紀子 編 今村 明,辻井農亜 編集協力—発達障害Q & A—臨床の疑問に応える104問
小平 雅基
1
1総合母子保健センター愛育クリニック小児精神保健科
pp.1354-1355
発行日 2024年10月15日
Published Date 2024/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207407
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本書は『精神医学』誌2023年5月増大号特集「いま,知っておきたい発達障害Q & A 98」に,追加の質問を加えバージョンアップして書籍化したものである。日常診療で生じる多岐にわたる実臨床に沿った疑問に対して,発達障害の臨床の第一線で活躍する専門家たちが回答している。医療から福祉・教育領域の支援者まで幅広い読者の知りたいことにQ & A形式でわかりやすく解説しており,発達障害臨床の指針となる一冊といえるだろう。
今では「発達障害」という言葉は世間一般に広く知れわたるようになっているが,その概念は時代とともに拡大してきた経過がある。歴史をさかのぼると1963年に米国で法律用語として誕生した「発達障害」という用語だが,さまざまな変遷を経て日本でその社会的理解や支援が促進される転換期となったのは2005年「発達障害者支援法」の施行といえる。ただし非営利団体が行ったある調査によれば,「発達障害」の社会的認知度は高い一方で,当事者や家族の多くは「十分に理解されていない」と感じているというギャップが存在することも報告されている。これは社会的な認知度が高まる一方,ともすればスティグマになりかねない危うさを示しているともいえよう。同様に「グレーゾーン」「Highly Sensitive Child」などといった言葉も発達障害と絡んで臨床現場に広がってきているが,これらもまた整理が難しく,そのような用語を使用する背景には,さまざまな医師側の葛藤が見え隠れしているようにも思える。
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