Japanese
English
特集 死別にまつわる心理的苦痛—背景理論からケアおよびマネジメントまで
死別のニューロサイエンス
The Neuroscience of Bereavement
吉池 卓也
1
,
栗山 健一
1
Takuya Yoshiike
1
,
Kenichi Kuriyama
1
1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部
1Department of Sleep-Wake Disorders, National Institute of Mental Health, National Center of Neurology and Psychiatry, Tokyo, Japan
キーワード:
死別
,
bereavement
,
遷延性悲嘆症
,
prolonged grief disorder
,
ニューロサイエンス
,
neuroscience
,
社会的絆
,
social bonding
,
オキシトシン
,
oxytocin
Keyword:
死別
,
bereavement
,
遷延性悲嘆症
,
prolonged grief disorder
,
ニューロサイエンス
,
neuroscience
,
社会的絆
,
social bonding
,
オキシトシン
,
oxytocin
pp.1605-1611
発行日 2022年12月15日
Published Date 2022/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206799
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抄録 同じ動物種の2つの個体間に形成される愛着や絆は,種の保存を支えるのみならず,生涯にわたり個体の適応に影響を与える点で,哺乳類にとって重要な社会的機能を担っている。社会的絆は親子,パートナー,グループメンバーなどの間で形成・維持され,その調節にはオキシトシン系,ドパミン系,オピオイド系の相互作用が重要な役割を持つ。愛着対象の喪失は社会的絆の破綻を意味し,これはヒト以外の動物種においても著しい行動反応を引き起こす。死別はその最たる例であり,ヒトでは死別が短期的に遺族の総死亡リスクを高め,長期にわたり心理学的,精神医学的影響をもたらしうる。死別に対する悲嘆反応は抑うつ反応とは異なる神経基盤を有すると推測され,痛み,愛着,報酬の制御機構の関与が示されている。さらに,悲嘆反応の遷延にかかわる神経生物学的知見が見出されつつあり,遷延性悲嘆症に特有の認知構造や背景生理機構の解明が待たれる。
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