特集 認知症診療の新潮流—近未来の認知症診療に向けて
特集にあたって
數井 裕光
1
1高知大学医学部神経精神科学教室
pp.833
発行日 2022年6月15日
Published Date 2022/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206670
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2021年6月に,アルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬aducanumabの製造販売が米国食品医薬品局によって迅速承認された。本薬剤によってアルツハイマー病の人の脳内アミロイドβの蓄積が減少することが確認されたからである。本邦では臨床効果に関するデータが不十分と判断され,継続審議となった。しかし米国における本薬剤の承認はアルツハイマー病の人と家族に大きな希望を与えるとともに,認知症治療薬の開発をあらためて活気づけた。
近年,さまざまな認知症の脳内病理を評価できるPET検査や脳脊髄液バイオマーカー検査が開発されてきた。そしてアルツハイマー病と考えられていた人の中にアミロイドマーカー陰性の人が存在することが明らかになってきた。したがって抗アミロイドβ抗体をはじめとする疾患修飾薬が使用可能になると,認知症の原因疾患の正確な診断がこれまで以上に重要になる。一方,疾患修飾薬の存在が世の中に啓発されると,認知症が疑われる早期受診者が増加すると思われる。関連学会では専門医,準専門医の育成に注力しているが,充足は難しいと考えられており,認知症スクリーニング検査の必要性が高まっている。血液バイオマーカー検査,機械学習や深層学習を活用して脳波デジタルデータを解析する方法などが期待されている。また情報通信技術(ICT)を用いて神経心理検査を遠隔で実施する取り組みも始まっており早期診断と生活支援に役立つと考えられている。
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