特集 精神医療に関する疫学のトピック—記述疫学,リスク研究からコホート研究まで
特集にあたって
内山 真
1,2
1東京足立病院
2日本大学医学部精神医学系
pp.425
発行日 2021年4月15日
Published Date 2021/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206309
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精神科疫学は,広く関心地域における心の健康に関する実態把握から,精神疾患の有病率,精神疾患や精神医学的問題の関連要因を明らかにする学問領域です。精神疾患や心の健康について,臨床に従事し,研究を実行し,医療政策を立案するのにきわめて重要な基盤的知識を与えてくれます。さらに,縦断的疫学研究では自然経過の中での精神疾患の発展や病因論的探索や検証が行われるようになってきました。
精神科疫学は20世紀初頭の記述疫学に始まりました。当初の研究のテーマは,関心国ないし地域に精神疾患や自殺など精神医学的な問題がどれほど存在するか,それらが地域的あるいは文化的属性によってどう異なるのかなどの記述疫学が中心でした。多くの国において記述的成果の比較が行われるようになった結果,精神疾患や精神医学的問題の同定に関する共通の診断基準や調査法の必要性が指摘されるようになりました。こうして,20世紀後半になって,精神疾患や関連問題を評価するための共通の診断基準や評価手技の開発が始まり,精神疾患の有病率を調べる動向が始まりました。
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