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はじめに
現在の社会が高齢統合失調症者にとって暮らしやすい社会かどうか,病態により一概には言えないであろうが,ある程度病状が残る統合失調症者にとってはかなり厳しい社会なのではないだろうか。たとえば高齢者の生活と切っても切り離せないものに介護保険制度があるが,介護保険の基本は,サービス供給者と需要者の「契約」である。人との付き合いを最小限にして生きてきた高齢統合失調症者は多く,そのような者の多くは介護サービス導入にまでたどり着けていない。「地域包括ケアシステム」が超高齢化社会に向けてのキーワードとされており,この仕組みの最終的な目標が「地域づくり」であることは知られているが,地域包括ケアの恩恵にあずかるためには,その街に暮らしていることが前提である。高齢統合失調症者は,地域に「番地」は持っていても暮らしてはいない。もちろんすべての者ではないが,特に「高齢」「単身」の患者は,地域での人的交流が希薄である。認知症カフェが流行りであるが,そのような場に出入りしている高齢統合失調症者はおそらくきわめて少ないのではなかろうか。
高齢統合失調症者の社会からの籠居率を小さくするための,また現時点で籠居している者の生活の質を上げるための方策は何か,ということが本論に求められた論題と考えるが,結論を先に述べるならば,発病から数年〜10数年の統合失調症の治療技術を向上させ支援体制を充実させるということが,最終的には最も必要とされることであろう。統合失調症は若い人の病気である。年をとってからでは遅すぎることが多すぎる。とは言え,未治療で経過し高齢化してから症状が顕在化する例もあり,来るべき超高齢化社会に向け,高齢統合失調症者の生活上の問題を整理しておくことも重要と考える。若干の考察を交えて以下に記載した。
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