特集 現代カルチャーと若者のメンタルヘルス—デジタル情報社会における心の理解と支援
特集にあたって
今村 明
1,2
,
金生 由紀子
3
1長崎大学生命医科学域保健学系作業療法学分野
2長崎大学子どもの心の医療・教育センター
3東京大学大学院医学系研究科こころの発達医学分野
pp.404
発行日 2025年4月15日
Published Date 2025/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048812810670040404
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現代の若者は,生まれながらにしてデジタル機器に囲まれて生活しており,「デジタルネイティブ世代」と呼ばれる。若者の生活ではYouTubeやTikTokなどのソーシャルメディアによる動画や,XやInstagramなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)による人とのつながりは欠かすことのできない状態となっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以降,情報のパンデミック(infodemic)も続いており,基本的欲求として,食欲,睡眠欲,性欲とともに情報欲があり,ネットから得られる情報により安心安全の欲求・所属欲求・承認欲求が満たされる。逆にこの情報欲が満たされないと情報飢餓,情報への渇望,情報アディクションを生じることとなる。
現代社会ではインターネット,スマートフォンの普及により,外出せずにギャンブルや買物(アルコール飲料や市販薬なども)を行える状況となり,新たな形態のアディクションがみられている。オンラインゲームやメタバースを活用したライブイベントでは,仮想現実が現実世界のリアルさを超えることとなり,若者たちの中ではリアル世界とバーチャル世界の重要度の逆転が起こっている。スマートフォンは最重要インターフェイスであり,心と体の一部と感じられるようにもなっているが,一方でスマートフォン過剰使用による睡眠障害,視力低下・内斜視,難聴,脳疲労,認知機能低下なども問題となっている。

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