特集 ひきこもりの理解と支援
特集にあたって
金生 由紀子
1
1東京大学医学部附属病院こころの発達診療部
pp.1435
発行日 2022年11月15日
Published Date 2022/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206770
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
ひきこもりは,さまざまな要因の結果として社会的参加を回避し,原則的には6か月以上にわたっておおむね家庭にとどまり続けている状態とされる。当初は不登校との関連が示唆されて,青年期や若年成人期で問題になることが多かった。しかし,最近では長期化や高齢化が注目されており,親が80代で本人が50代に至った場合が象徴的に8050問題として取り上げられている。このようにひきこもりが幅広い年代で認められることに加えて,ひきこもりにつながり得る生きづらさはより低年齢から生じている場合も考えられ,ひきこもりを理解するにあたっては,ライフステージに沿うという観点が重要と思われる。
また,ひきこもりは非精神病性であるが,確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性が低くないとされており,ひきこもりの多軸評価にあたっては,①背景精神障害の診断,②発達障害の診断,③パーソナリティ傾向の評価が,推奨されている。どのようなひきこもりであるかを把握する上で,精神医療は一定の役割を果たしていると思われる。同時に,ひきこもりの支援に向けて,「社会モデル」が重要であると認識されるようになってきた。多様な生き方を認める社会が求められており,一方で,それを前提とした上で支援が必要とされるひきこもりには孤立に伴う苦痛や機能の障害があるという指摘がある。
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.