特集 精神疾患の気づきと病識
特集にあたって
福田 正人
1
1群馬大学
pp.745
発行日 2024年6月15日
Published Date 2024/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207302
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精神疾患の大きな特徴は,「本人の気づき」が難しいことである。病気についての気づきという本格的なテーマは「病識」と呼ばれてきたが,気づきにはより広い裾野がある。症状の始まりの時期にそれが病気によると気づかないこと,治療を受けていても症状やその変化に気づかないこと,体の症状や行動の表出が精神疾患に由来すると気づかないことは,日常診療のなかで出会うその例である。
そうした気づきの難しさは,精神医療の特徴の重要な要因となっている。たとえば,受診が遅れがちになることや,受診に後押しが必要なことが多い状況は,精神保健についての特徴である。共同意思決定(shared decision making:SDM)に努めても治療合意が難しい場合があることや,アドヒアランスという考え方そのものが難しいことは,精神医療についての特徴である。精神医療に特化した精神保健福祉法で非自発入院や行動制限が定められていることは,法制度についての特徴である。
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