特集 Research Domain Criteria(RDoC)プロジェクトの目指す新たな精神医学診断・評価システム
「診断」という「線」を引くこと
尾崎 紀夫
1
Norio Ozaki
1
1名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野
1Department of Psychiatry, Nagoya University, Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
pp.7-8
発行日 2018年1月15日
Published Date 2018/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205516
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“There is nothing new under the sun. Nothing exists until it has a name. Nature never draws a line without smudging it.”とは,Lorna Wingが自閉スペクトラム概念の変遷について記述した文章2)の最後に引用した3つの格言である。Wingはこの文章において,Kanner型自閉症概念に加えてAsperger症候群概念が導入されたことにより,Asperger症候群への理解が進むという利点の反面,二つが線引きされた結果生じた問題点を述べた上で,多様な観点から連続対として捉える,マルチディメンジョナルな評価の重要性を説いている。
日々の精神科臨床において,「不安症として診断・治療されていた甲状腺機能亢進症」といった症例に遭遇すると診断の重要性を感じる一方,疾患と健康,あるいは疾患間の線引きに抵抗を感じることは少なくない。また同一の精神科診断であっても,症状のあり方や取り巻く状況は個々に異なり,その結果,多様な悩みやニーズを持つ精神科患者の個別性に配慮した診療(Precision Medicine)を実現するためには,カテゴリカルに分類するのではなく,マルチディメンジョナルな捉え方が不可欠である。
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