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本誌は,伝統的に,優れた投稿論文を掲載することを編集方針の基本としていますが,最近本誌への投稿論文数が減少傾向にあるようです。要因としては,精神科の専門雑誌が増えた,オリジナルな研究成果を英文論文として公表することが一般的となった,忙しくて論文を書いている時間がない,そもそも論文を書こうという人が少なくなった,などさまざま考えられます。もし,私たちの中に臨床における貴重な経験や,臨床疑問とその解決法などの共有すべき知見を公表することに消極的な態度が強くなっているとすれば,それは改めるべきでしょう。特に若い人にとって,得がたい臨床経験を症例報告としてまとめて公表することは,将来のためにも必須かつ重要な経験であると思います。また,研究論文とはならない内容であっても,私たちが共有すべき貴重な専門的情報は少なくありません。来年度からスタートする新しい専門医制度では,専門医になるための経験として学会発表や論文執筆なども重要視されていますので,若い医師が症例報告などを書く機会が増えるものと期待されます。
本号の巻頭言では最近話題となることの多い高齢者の自動車運転免許の返納について,精神科医として考慮すべきことや,関わる際の基本姿勢が述べられています。展望では裁判員裁判における鑑定人尋問について,その実際と問題点や課題がまとめられています。一般市民を巻き込んで行われる裁判員裁判において,精神科医が鑑定人として,どのようにその重要な役割を果たすべきかを知るのに大変参考になる論考です。研究と報告は,注意欠如・多動症における自閉スペクトラム症併存の有無による事象関連電位の違い,および災害派遣精神医療チーム(DPAT)の役割に関するもので,いずれもきわめて今日的な課題を扱うものです。短報は,aripiprazoleによる著明な体重増加,発熱・白血球増多を伴うカタトニア,およびclozapine使用に伴う遅発性ジストニアを示した3編の貴重な症例報告です。資料や紹介なども貴重で興味深い内容です。
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