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今年は7月3日になってようやく台風1号が発生しました。1951年以降で2番目に遅い記録とのことです。気象庁によると最大風速が60m/sという最大級の「猛烈な台風」であり,米軍合同台風警報センターによれば150knotsという「Super Typhoon」であったそうです。台湾から中国大陸に向けて進んだため,地震とその後の大雨の被害に疲弊していた九州地方などに,さらに被害をもたらさなかったのは幸いでした。
本号の「巻頭言」は,わが国には薬物依存症の専門医療機関がきわめて少なく,その治療が特殊なものとされがちである現状において,「依存症患者の対応を困難にしている最大の原因は,患者に対する治療者の陰性感情・忌避感情である」と訴えています。治療者による忌避や否定の背景に多少なりとも無知があり,それが社会から問われている精神医療のあり方を拘束しているとすれば,私たちがすべきことはまず,依存症の診断や治療の進歩について学ぶことであると思われます。「展望」では,頭痛というきわめて頻度の高い症状について,うつ病との関連で新しい知見がまとめられています。「研究と報告」はパーキンソン病の治療に関する2つの論文です。「短報」でもハンチントン病やMarchiafava-Bignami病などが報告されています。パーキンソン病のような脳器質性疾患の治療においては,精神科医は神経症状についてよく分からず,神経内科医は精神症状についてよく分からないという構図がみられがちです。そのため,両者がどれだけうまく連携できるかが,患者のQOLを左右することになります。本号も含めて,精神科領域の雑誌に,脳器質性疾患の症例報告が相対的に多いことにしばしば気付かされますが,その背景には,身体面の治療に対して私たちが常に抱いている問題意識があるのだと思います。また近年,精神疾患における身体的健康の重要性がいっそう認識されつつあることも,投稿論文の内容に反映されているようです。今後は,より広範囲な精神疾患における,症例レベルのめぼしい新知見に関する投稿が増加することを期待しています。
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