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DSM-5が公表されてから2年余りの間に,国内外から,それに関するおびただしい数の書籍,雑誌の特集,論文などが出版されています。全体的な紹介や細部の変更点の解説により理解を助けようとするものから,背景にある思想に関する論考や批判,精神医学の領域内外に及ぼす影響やそれに関する懸念など,内容もきわめて多様です。このようなムーブメントを見ていると,狭い精神医学の出版界のこととはいえ,DSMによる影響の大きさにあらためて驚かざるをえません。日本語訳が出版されて1年余りが経過し,私たちもDSM-5の内容をほぼ知るところとなったこの時期に,本号では,9名の精神科医によるDSM-5に対する「オピニオン」をまとめて掲載しています。さまざまな立場から,DSM-5の評価できる側面と評価しがたい側面について執筆されており,興味深い内容が多いので,大いに読者の皆様のご参考になるものと思います。同じ材料を俎上に乗せても,料理の仕方によりこれだけ違ったものになるのか,このような多面性もDSMならではというべきか,と妙に感心してしまいます。
「巻頭言」では精神医学におけるてんかんの位置付けを中心に論及されています。「展望」では職域におけるメンタルヘルスの問題に関して,トラウマという視点からレビューされています。毎号読み応えのある「精神科の戦後史」は第7回を迎え,精神保健法と精神保健福祉法を中心に,精神医療に関わる法制度の歴史が,中立的立場からまとめられています。本号の「研究と報告」は1編だけですが,うつ病に対する行動活性化療法による集団精神療法プログラムを開発し,その効果を検討した興味深い報告です。「資料」では事業所内リワークの実際と課題が紹介されています。「短報」ではバセドウ病による症状精神病について,「私のカルテから」では認知症高齢者における比較的稀な身体合併症について,それぞれ貴重な症例が報告されています。DSM-5において分類が消滅した症状精神病ですが,本号の「巻頭言」でも指摘されているように,身体合併症の問題ともども,臨床的に優先順位の高い病態であることは言うを俟ちません。
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