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突然の豪雨や気温の乱高下といった異常気象が日常化しつつある夏を乗り越えて,じっくりと読書をしたくなるような季節にさしかかっています。そのような折にふさわしく,本号では,「精神疾患の生物学的診断指標—現状と開発研究の展望」という読み応えのある特集が組まれています。とはいえ,けっして難解ではなく,各分野の専門家の先生方が最新の情報を分かりやすく記述しておられます。トップバッターは,光トポグラフィー検査を保険診療に導いた功労者である福田正人先生で,抑うつ状態の鑑別診断補助のための臨床検査としての意義や問題点と今後の展望を述べておられます。その後に脳画像や神経生理の研究に基づいたバイオマーカーに関する論文が4編続きますが,他の3編を含めていずれから始めても興味深く読んでいけます。「特集にあたって」でも述べられているように,大量の情報処理を含めた技術の進歩による解析方法の高度化および精緻化がもたらしつつある研究の進展が,いずれの論文からもうかがわれるからだと思います。その中でも情報処理の進歩を反映したという点では,「計算論的神経科学に基づく精神疾患バイオマーカー開発の現状と今後の展望」および「精神疾患における臨床症状定量化—情報通信技術や機械学習を用いたアプローチ」が最もストレートに思われました。
特集以外にも,臨床に根差して疾患の生物学的基盤を追求する「Logopenic variant of progressive aphasia(LPA)—5症例における臨床症状と機能画像所見との関係」が掲載されています。レビー小体型認知症の提唱者として一般にも広く知られている小阪憲司先生による巻頭言もそのように地道な臨床と研究を積み重ね続けることの大切さを語っているように思われます。
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