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特集 認知行動療法の現在とこれから—医療現場への普及と質の確保に向けて
PTSDに対する持続エクスポージャー療法
Prolonged Exposure Therapy for PTSD
井野 敬子
1
,
金 吉晴
2
Keiko INO
1
,
Yoshiharu KIM
2
1名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野
2国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所成人精神保健研究部/災害時こころの情報支援センター
1Department of Psychiatry, Cognitive-behavioral Medicine, Nagoya-City University of Medicine, Nagoya, Japan
2Department of Adult Mental Health, National Institute of Mental Health, National Center of Neurology and Psychiatry
キーワード:
CBT
,
PTSD
,
Prolonged Exposure Therapy
Keyword:
CBT
,
PTSD
,
Prolonged Exposure Therapy
pp.441-447
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205384
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はじめに
生死に関わる脅威などのトラウマ的出来事を体験した後,イベントの種類に応じて2〜8割程度にpost traumatic stress disorder(PTSD)症状が認められるとされるが,その多くは半年ないし1年以内に自然軽快する9)。したがってPTSDとは,発症ではなく慢性化に病理の本態があると見なされる。慢性化したPTSDの治療としては,SSRIなどを用いた薬物療法と,トラウマに焦点化した認知行動療法があるが,薬物療法の効果量は0.5以下であり,改善しにくい例も少なくない。これに対して認知行動療法の中の持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure Therapy;PE)では効果量がほぼ1.5を超えており,またエビデンスレベルも薬物療法よりは高いことが国際的にも報告され,日本でもランダム化比較試験(RCT)が実施されている。このため慢性PTSDに対してはPEの適応が検討されるべきであるが,日本の医療現場には十分に普及していないのが現状である。本稿では,PTSDの疫学,PEの概要を述べ,さらに日本での普及と質の確保の課題について検討したい。
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