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はじめに
強迫性障害(obsessive-compulsive disorder;OCD)に対して認知行動療法(cognitive behavioral therapy;CBT)が有効であることは論をまたない。治療ガイドラインにおいてCBTは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhivitor;SSRI)を用いた薬物療法とともにOCDのファーストラインの治療として推奨されている。さらに無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)による治療効果比較研究によって,OCDに対するCBTの効果は薬物療法の効果を上回ることが示唆されており,過去30年余に実施された精神療法・薬物療法のRCTを対象とした最新のネットワーク・メタ解析10)の結果もCBTを用いた精神療法が,SSRIを主体とする薬物療法より有意に効果が高いことを示した。大うつ病や各種不安障害への精神療法と薬物療法のメタ解析を実施したCuijpersら3)によれば,精神療法の効果が薬物療法の効果を有意に上回ったのはOCDを対象にした研究のみにみられた特徴であったという。
OCDに対するCBTの有効性は,他の疾患以上に高いと考えられる一方で,本邦におけるその普及はまだ十分とはいえない状況にある。その原因には,CBTそのものの普及の問題とともに,OCDという疾患の特殊性ゆえに,その治療を請け負う医療機関自体も限られているという問題がある。しかしながら,2013年にDSM-51)へと改訂されOCDが不安症から独立したことや,2016年にOCDを含む不安障害へのCBTの診療報酬が適用拡大されたことなど,OCDに対するCBTは,精神科医療の現場において今高い注目を集めている。本稿では,まず現在のOCD概念について簡単に触れ,ついでOCDに対するCBTの現状について記述する。
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