「精神医学」への手紙
内因性うつ病の「身体症状」と「生気悲哀」について
田中 恒孝
1
1松南病院精神科
pp.95
発行日 2017年1月15日
Published Date 2017/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205310
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「精神医学」58巻8号の展望「うつ病と頭痛—病態生理および抗うつ薬の薬効からの考察」1)を読み,うつ病という精神障害と頭痛という身体症状を結びつけて検討していることに興味を持った。さらに両者の関係を疫学・病態の知見と,治療的観点から考察した生物学的視点にも興味がそそられた。高橋4)が躁うつ病の示す身体症状を調べた研究でも,頭痛を含む身体症状が多発することを強調し,情動に関係する脳部位として帯状回,海馬,扁桃核,視床下部などを想定している。
一方,Schneider3)は循環病(従来診断による躁うつ病)性うつ病は反応性うつ病と異なり,身体感覚や身体感情に基づく生気悲哀vitale Traurigkeit(頭痛など自律神経症状を含む生命感情の抑うつ)に起因しているという。うつ病の生気悲哀に注目した記述は少なくなく治療的には「励まし」は無効で,抗うつ薬や電気けいれん療法が有効である3,5,6,7)。筆者の調査6)では循環病者35例中約31%が頭痛・頭重を示し,内因性うつ病にも躁うつ病性うつ病にも頭痛が認められた。躁うつ病は10〜30歳台に初発し,内因性・単極性うつ病は初老期〜老年期に初発するが,うつ病相における生気悲哀の内容は同一で,再発時にみられる生気悲哀内容は症例ごとに同一性・一様性が認められた。
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