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日本とドイツの精神医学の間に存続している親善関係をわれわれは非常な喜びに感じております。それゆえ,私は,この好ましい,しかも非常に友好的な交流をさらに深め,そして確固たるものにするために,あなたがたのもと日本へと喜んでやって参りました。両国の緊密な共同研究はこれまでもありましたし,また将来も両国にとって有益なものとなるでありましよう。地球上でこれ以上遠い国は他にはないほど両国の距離は離れているにもかかわらず,ドイツと日本の精神医学の関係が他のどの国々よりもきわめて緊密であることは,興味深いものがあります。われわれは,この関係が今後も続き,しかもなおよりよいものに発展することを望むものであります。
ご承知のように,誘発(Provokation)の問題は精神医学における非常に古い課題であり,ほぼ100年来,文献上繰り返し現われてきたものであります。今から50年ほど前のほうがそれ以後の時代よりもうつ病の誘発因子はむしろ高頻度に認められ,かつしばしば論じられておりました。すなわち,Ziehenは1911年に彼の症例の70%に誘発を確認できたのに,Kurt Schneiderは1937年に彼の患者の僅か3.1%のみに誘発因子を見出したとしているのです。誘発問題はすでに長い間よく知られた事柄であり,これまでにも幾度となく論じられてきましたが,それにもかかわらず,誘発の頻度,その他多くの問題についてはこれまで十分には解明されておりませんし,おそらく今後もさらに不明な点が残るでありましょう。このように多くの疑問が残されておりますので,われわれは2年前オーストリアのグラーツ大学神経科と共同で「うつ病の誘発問題」に関する国際シンポジウムを開催いたしました(W. Walcher(hrg.):Probleme der Provokation depressiver Psychosen, Brüder Hollinek, Wien, 1971)。この学会に寄せられた興味と関心がきわめて大きく活発でありましたので,本年はうつ病の治療や体系にもテーマをやや拡大し,もう一度この問題について数週間前に開かれた第2回目の国際シンポジウム脚注で論じてまいりました。そこではつぎのようなことが明らかになりました。すなわち,誘発という事実は疑う余地がないということ,むしろ内因性うつ病に誘発が存在するということはごく一般的に認められてさえいるということであります。しかしながら,その他の問題点については,なおまだ多くの意見が分かれるところであります。しかし,誘発問題が多かれ少なかれ無責任なおしゃべりに終わるべきでないとすれば,本日は誘発の基礎的な問題点についてお答えしておかなければなりません。
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