巻頭言
精神科リエゾンチームと公認心理師に思うこと
西村 勝治
1
1東京女子医科大学医学部精神医学講座
pp.972-973
発行日 2016年12月15日
Published Date 2016/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205276
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身体疾患患者に合併する精神障害
2011年,それまでの4疾病(がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病)と並んで,精神疾患が医療政策の重要な対象となり,国民に広くかかわるものとして明確に位置付けられた。ところで,これら4疾病には,うつ病を代表とした精神疾患が高頻度に合併する。たとえば,心筋梗塞患者の15〜20%に大うつ病が合併する。さらに,うつ病は患者のQOLを低下させ,身体疾患の危険因子となり,その予後を悪化させることが高いエビデンスをもって実証されている2)。世界疾病負担の指標である障害調整生命年(disability-adjusted life year;DALY)に照らせば,うつ病が他の疾患に合併すると,心身共に重症となり,障害による健康のロスが大きくなり,さらには寿命のロスも加わることになる。したがって,メンタルヘルスへの介入はこのいずれをも改善させることが期待される。
しかし課題は大きい。第一に,これらの患者のほとんどが精神科医療にアクセスしていないということ(ただし,これらの患者がすべて精神科に押し寄せたら精神科医療はパンクしてしまう)。第二に,これらの患者が従来の精神科治療を受けたとしても,適切な効果が上がるとは言えないこと。身体疾患に伴ううつ病に対して標準的な治療を行っても,その効果は決して十分ではなく,ましてや身体疾患の予後改善には繋がらない2)。うつ症状が改善してもセルフケア行動は改善しないという報告も少なくない。餅は餅屋といった発想で,循環器疾患は循環器医,精神疾患は精神科医というような分断した医療は必ずしも有効ではない,ということだ。
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