書評
—Muskin PR 原書編集,髙橋三郎 監訳,染矢俊幸,北村秀明,渡部雄一郎 訳—DSM-5®診断トレーニングブック—診断基準を使いこなすための演習問題500
井上 猛
1
1東京医科大学精神医学分野
pp.95
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205105
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1980年にDSM-Ⅲが登場してから,従来診断とDSM診断(ICD診断も含む)の比較,両者の優劣に関する論争が続けられてきた。両者を中立的に考えてみると,精神科診断における重要な問題点,特に診断論理の特性に気付かされる。したがって,論争はとても意味があったと思う。
従来診断では精神疾患の診断基準はややあいまいであり,診断は個々の精神科医の裁量・力量に任される部分が多く,診断の一致率に問題があり,従来診断を研究に用いることは難しかった。しかし,その良い点は階層原則を設けて,器質性→内因性→心因性の順番に優先順位をつけて診断することを推めていることである。一方,個々の疾患のDSM診断基準を『DSM-5®精神疾患の分類と診断の手引』で読んだだけではDSMが階層原則を考慮しているのかどうかは分かりづらいが,たとえば『DSM-5®鑑別診断ハンドブック』の「抑うつ気分の判定系統樹」を読むと,実はDSMも階層原則を考慮していることが分かる。
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