書評
—Barnhill JW 原書編集,髙橋三郎 監訳,塩入俊樹,市川直樹 訳—DSM-5®ケースファイル
寺尾 岳
1
1大分大学精神神経医学
pp.986
発行日 2015年11月15日
Published Date 2015/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205067
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この本は,コーネル大学医学部性精神科のBarnhill教授による『DSM-5®RClinical Cases』(2014)の日本語版である。岐阜大学大学院精神病理学分野の塩入俊樹教授や市川直樹先生など10数名の先生方が翻訳され,髙橋三郎先生が監訳をされた。
この本を読み終わった時に,訳者の先生方の翻訳に対する情熱と惜しみないご尽力に感服した。それは本書には訳のぎこちなさも訳文の分かりにくさもほとんどないからである。そもそも原本で取り上げられた症例が素直な定型例ばかりではなく,そうでないものが結構含まれている。しかもそれぞれの症例は,診断を確定するためのすべての情報を含んでいるとは限らない。これらの変化球をなんとか,ストライクゾーンへ持っていく訳者の苦労は大変なものであったと推察する。それぞれの先生方は日常診療にお忙しい中で,相当な労力と時間を費やされたに違いない。それに加えて,訳者の心優しい配慮も随所にみられる。たとえば,マーサズ・ヴィニヤードや聖杯など,日本人になじみの薄い言葉にわかりやすい訳注が付けられている。以下に,読後感として印象に残ったことをいくつか挙げたい。
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