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特集 社会認知研究の最近の動向
発達初期の他者理解—行為の理解から心的状態の理解へ
Early Social Cognition in Humans: From understanding physical actions to understanding the mental states of others
明和 政子
1
Masako MYOWA-YAMAKOSHI
1
1京都大学大学院教育学研究科
1Graduate School of Education, Kyoto University, Kyoto, Japan
キーワード:
Infants
,
Development
,
Action understanding
,
Self-other distinction
,
Mirror neuron
,
Mentalizing
Keyword:
Infants
,
Development
,
Action understanding
,
Self-other distinction
,
Mirror neuron
,
Mentalizing
pp.23-28
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205093
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はじめに
ヒト特有の心的機能の側面が,比較認知科学や神経科学の成果を中心に明らかにされてきた。情動については,系統発生的に古い脳部位(皮質下,辺縁系)が関わる基本情動のいくつかは他の動物にもみられるが,照れ,嫉妬などの派生情動はヒトに顕著である。高次認知機能とされる社会的認知については,特に認知的共感や欲求,信念など他者の心的状態の理解(心の理論)の側面が注目を集めてきた。それらに共通する基盤は,「他個体について直接知覚した状態とその背後にある心的状態を自己のそれと分離し,自他それぞれを表象する能力(自他分離表象)」にあると考えられる。しかし,ヒトの自他分離表象の動的な発達プロセス,つまり自他未分化の状態から自己と外部(環境,他個体)の異なる表象がどのように獲得され,高次の社会的認知へといかに結びついていくのかといった点については未だ不明な部分が多い。本稿では,自他分離表象の個体発生に焦点をあて,発達科学が明らかにしてきた最新の知見を紹介するとともに,ヒト特有の心的機能の定型—非定型性を議論する上で取り組むべき課題を考察する。
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