Japanese
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特集 社会認知研究の最近の動向
自閉スペクトラム症とオキシトシン
Autism Spectrum Disorders and Oxytocin
山末 英典
1
Hidenori YAMASUE
1
1東京大学医学部附属病院精神神経科
1Department of Neuropsychiatry, Graduate School of Medicine, University of Tokyo, Tokyo, Japan
キーワード:
Autism spectrum disorders
,
Clinical trials
,
Neuropeptide
,
Oxytocin
,
Social behavior
Keyword:
Autism spectrum disorders
,
Clinical trials
,
Neuropeptide
,
Oxytocin
,
Social behavior
pp.29-36
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205094
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はじめに
従来の自閉症やアスペルガー症候群や広汎性発達障害を含む概念である自閉スペクトラム症(autism-spectrum disorder;ASD)は,一般人口の100人に1人の頻度で認められる。このASDの中核症状で,表情や視線や声色あるいは言語を介して他者と双方向性に交流することの障害である社会的コミュニケーションの障害に対する有効な治療方法は確立されておらず,本人や家族さらには社会全体への過度な負担が問題となっている。そうした中で近年,ハタネズミなどの実験動物において愛着や友好関係の形成に重要な役割を示すことが知られてきた神経ペプチドでもあるオキシトシンの投与で,ヒトでも表情や顔の認知の改善と何らかの利益を共有するような内集団での信頼関係は促進されることが,メタ解析レベルでも示された17)。内因性ペプチドであるオキシトシンは,本邦では子宮収縮作用による分娩誘発などを適応症として点滴静注用製剤が承認されているが,欧州ではオキシトシンンの経鼻製剤が乳汁分泌促進の適応で承認・販売されている。さらに,ASD当事者においても,オキシトシンの点滴投与によって常同反復性や朗読の際の情感の理解困難などの症状が改善したという報告や,経鼻投与でも目もとから感情を推し量る能力の改善や協調的な行動が促進されるという報告がされた15)。こうした知見から,ASD中核症状に対する初の治療薬としてのオキシトシン経鼻剤の可能性に関心が集まってきている14,16)。
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