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はじめに
脳炎は,脳実質に炎症を来す疾患の総称である。強い意識障害で始まる広汎性脳炎に対し,辺縁系脳炎は扁桃体や海馬など辺縁系を傷害し記憶障害や精神症状で始まることが多い。従来から報告されてきた悪性腫瘍に随伴する傍腫瘍性辺縁系脳炎に加え,近年,悪性腫瘍の有無に関わらず神経細胞表面抗原に対する抗体が関与する辺縁系脳炎の存在が次々と報告され,自己免疫性辺縁系脳炎と総称されている。中でもN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体抗体が関与する自己免疫性辺縁系脳炎は,幻覚などの精神病症状や行動異常を呈することから初期には統合失調症と診断されることも多く1,8,15),精神科臨床と関わりが深い。これらの自己免疫性辺縁系脳炎に罹患する患者は子どもから高齢者まで幅広い年代に及び,免疫療法が有効であることなどから早期診断,早期治療がより重要である。
一方,緊張病症候群は無言症,昏迷,拒絶症,姿勢常同,蝋屈症,常同症,反響現象などを特徴とする意志発動の障害である。気分障害や統合失調症などの精神疾患だけでなく身体疾患に伴うものが多いことが知られている。DSM-52)では他の医学的疾患による緊張病性障害という項目が設けられ,頭部外傷,脳血管疾患,脳炎などの神経疾患や高カルシウム血症,肝性脳症などの代謝疾患が緊張病を引き起こすことがあると記載されている。
自己免疫性辺縁系脳炎は精神病症状や緊張病症候群を呈することから,精神科を最初に受診する患者も多いと思われる。神経内科医あるいは小児科医との連携が欠かせず精神科臨床と神経内科・小児科臨床の境界領域に位置付けられる。本稿では神経細胞表面抗原に対する抗体を伴う自己免疫性辺縁系脳炎と緊張病症候群との関係について述べる。
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