オピニオン DSM-5—私はこう思う
DSM-5の批判的検討—精神分析的臨床家の立ち位置から眺望する
松木 邦裕
1
1京都大学大学院教育学研究科
pp.616-619
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204965
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「かつての医学は,神経症を目に見えない損傷の望ましくない結果であると考えていた」と精神分析の創始者フロイトが記したのは,1937年である3)。そしてその後,とりわけ米国では心因を重視する精神医学が興隆した。歴史は繰り返す。今日もこのせめぎ合いは続き,現代の精神医学では,精神疾患は脳神経の生物学的病変によると規定し,神経症,すなわち心因,あるいは心の発達での環境因による疾患は存在しないとする立場がその勢力を増強させている。
その生物学志向精神医学推進の象徴がDSMである。その傾向は,当然のことであるが,DSM-5ではさらに進んでいる。統合失調症や双極性障害,抑うつ症についてはすでに生物学的病変という観点からの分類が既遂されているため,5では改めて大きな変更は持ち込まれていない。一方,小児関連疾患とパーソナリティ障害に関しては,生物学的病変の観点から診断名を分類する方向へと大きくシフトしている。
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